常識的な風俗店を利用した場合、利用規約を守って利用する限りは、トラブルに巻き込まれることは極めて少ないものです。しかし悪質な店に出会ってしまうとそうはいきません。

こちらが利用規約を厳守していたとしても、店や風俗嬢から詐欺被害に遭ってしまう可能性があるのです。ここでは、よくある風俗詐欺について解説します。

風俗にまつわる詐欺とは

まずは、詐欺とは何かについて知っておきましょう。詐欺とは一般的に「人を騙して錯誤に陥れ、意思表示をさせること」を指します。少し突っ込んだ話をしますと、詐欺は法律的には民事的な「詐欺」と「詐欺罪」という刑事的な詐欺に分かれます。

風俗詐欺が民事的な詐欺に当たる場合

民法では、詐欺についての規定があります。相手に欺かれて錯誤に陥り、そのために意思表示をした場合、その意思表示を取り消すことができるというものです。

「詐欺罪」という犯罪に当たる場合

風俗店や風俗嬢の行為が詐欺罪という犯罪に当たる場合は、警察による逮捕・起訴の対象となり、有罪になると懲役10年以下の刑を科されることになります。

民事的な詐欺と刑事的な詐欺罪の違い

ちなみに、民法上の詐欺と刑法上の詐欺とでは少し考え方が異なります。刑法上の詐欺は、欺かれた結果、財物を交付するところまでが必要です。一般的に、刑法上の詐欺罪といえる場合は、民法上の詐欺も成立すると考えられています。

風俗詐欺の6つの典型例と対策

風俗詐欺の多くは、風俗店や風俗嬢から客に対して行われますが、風俗店から風俗嬢に対して行われる詐欺もあります。風俗詐欺と呼ばれる典型的な事例を解説します。

1.妊娠詐欺

妊娠詐欺とは

経緯はいろいろありますが、風俗嬢と性行為をしてしまい、その後で風俗嬢から「あの時の性行為で妊娠した」と告げられ、中絶費用などのお金を要求されるのが「妊娠詐欺」と呼ばれる詐欺です。

多くの場合、中絶費用や妊娠による休業補償を要求されたり、店をクビになったといって当面の生活費を要求されたりといった被害が出ています。この他にも、精神的な苦痛を受けたとして慰謝料を要求されることもあります。

被害者にも本番行為をしてしまったという負い目があるため、言われるままに支払ってしまうケースも後を絶ちません。妊娠詐欺については、対応方法なども含めて詳しくは「風俗嬢を妊娠させた時の4つの問題点と【失敗しない】3つの対処法」で解説しています。

2.パネルマジック・振替店詐欺

パネルマジックとは

パネルマジックとは、風俗嬢本人の画像ではあるものの、本人よりも可愛く見せるよう大幅に加工することをいいます。

中には、長年働いている女性の若いときの写真をホームページに掲載したまま放置していて単に現在の容姿と大きく違っているといったケースもありますが、基本的にはphotoshopなどの画像修正ソフトで目や胸の大きさ、肌の質感、体型などを大幅に改良していることがほとんどです。

風俗のお客としては、自分好みの女の子がやってくると期待していたところ姿態がまったくことなっているため騙された気分になり憤慨するのは当然のことでしょう。

振替店とは

風俗の振替店とは、お客が指名した女性とは全く違う別人に接客にあたらせる店をさします。

振替店の中には、事前にお客に振替の承諾をとる良心的な店もあります。例えばお客が指名したい女の子が接客中であったときに「Aちゃんは他のお客様を接客中ですので、Bちゃんでいかがでしょうか?愛嬌があってなかなか可愛いですよ」といった流れです。お客がこれを了承しお金を払うのであれば詐欺とは呼べないでしょう。

それに対して、お客が指名した女の子が休みであったり接客中のときに、お客の承諾なしに別の女の子を寄越したり、酷いケースだと、そもそも在籍していない可愛い女の子の写真をHPに載せてお客を店に誘導し、在籍している女性をだしてくることもあります。写真の入手方法としては、他店のホームページやモデル紹介サイト、或いは、ネットの画像検索で可愛い子の写真を拾ってきます。

こういった、振替についてお客の承諾ない場合や、そもそも写真の子が存在しない場合に、別の在籍女性をあてがってくるケースを振替店詐欺といいます。

刑法の詐欺罪に問えるか

パネルマジックにしても振替店にしても、一番の問題点は、”立証が難しい”の一言に尽きます。

誰の目から見ても明らかに画像とは別人であったとしても、こういった詐欺まがいの手口でお客を集める店は、「同じ女性だ、体型が変わっただけだ、写真写りが良かっただけだ」と平然と言ってのけます。そして、キャンセルを申し出ると、キャンセルは受け付けていない、或いは、キャンセル料がかかると言われるのがオチです。

では、こういった、画像を加工したり、別人を派遣したりする風俗店を詐欺罪として警察に突き出すことはできないのでしょうか。

これは残念ながら難しいでしょう。確かに、形式的に考えれば、騙されて別人をあてがわれてお金を払わされたり払わされそうになったりするわけですから、詐欺罪や詐欺未遂罪(まだお金を払っていない段階)で被害届けを出して警察に風俗店を処罰してもらえるようにも思えます。

しかし、実務上は、お客を誘致する広告に多少の嘘や紛らわしい表示があったとしても、詐欺罪が適用されることはなく、景品表示法の優良誤認表示の禁止違反に該当するに留まります。

景品表示法第5条第1号(不当な表示の禁止)

第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの

これに違反すると、まずは消費者庁が措置命令という「指導」を行い、指導したにも拘わらずそれに違反した場合に初めて刑事罰が科せられます。

納得がいかないかもしれませんが、例えば、オージービーフを国産黒毛和牛と偽って販売したとしても詐欺罪とはならず、この景品表示法違反として扱われるだけなのが法律実務の現状です。単なる石ころをダイヤモンドと騙して表示したり販売するなどのレベルに達しなければ詐欺罪が適用される可能性は極めて低いでしょう。

パネマジや振替店の話に戻すと、確かに、どこまで違えば詐欺罪になるのか否かといった判断を裁判官が行うことは現実的ではなく、また、最初に述べたとおり、その写真が加工されたものであるかどうかを立証することが困難なことからすれば、刑法の詐欺罪として犯罪にするのは難しいと言わざるを得ません。

3.たけのこはぎ

たけのこはぎとは

風俗に限らずですが、「たけのこはぎ」という被害も横行しています。当初は安価な価格を提示されていたのに、どんどんオプションを要求され、結果的に高額の請求をされるというものです。

たけのこはぎの問題点

たけのこ剥ぎは、詐欺といえるかどうかの判断が難しいところがあります。最終的に高額な請求がきたとしても、実際の価格を提示されてそれに合意している場合は、「欺かれている」とは言えないからです。

たけのこはぎ被害の対処法

問題点のところでも解説した通り、詐欺といえるかどうかはケースによって異なります。もしもキャッチなどで安価な価格を提示されており、オプションをつけるときにはその価格でつけられるものと思っていた場合などには、詐欺が成立する可能性があります。

4.交際にもっていき、金銭を要求する

同じ風俗嬢を何度も指名していると親しくなって、個人的な話をしているうちに恋心を抱くこともあるでしょう。

そういった被害者の心理をうまく利用し、「大学に通いたいけど学費がないから風俗をするしかない」「風俗から足抜けしてあなたと結婚したいけど、この借金がどうにもならない」などと悩みを打ち明け、お金を出させようとする詐欺があります。

また、風俗を足抜けする代わりに愛人になる愛人契約などもあります。被害者の中には、「返さなくていい」とお金を無償で渡してしまうケースもあれば、「返すのはいつでもいいから」などと借金として女性にお金を渡すケースがあります。

実際に、こういった被害にあって数百万、数千万というお金を騙し取られるケースもあります。

問題点

こういった、交際をネタにお金を要求するような詐欺の問題点は、被害額が高額になりやすいということ、詐欺であることの立証が難しいことです。そもそも、恋愛感情や同情などの被害者の好意を利用した詐欺であることから、被害者もお金を渡すときに借用書などの書類を交わしていないことが多いでしょう。

また、約束の内容によっては「不法原因給付」として、加害者の風俗嬢に対して返金や損害賠償を求めることが難しいケースもあります。

不法原因給付とは

不法原因給付とは、不法・違法なことに基づいて金銭などのやりとりがあることを指します。わかりやすい例でいえば、「殺人を依頼してお金を払った」というような場合です。

一般的な契約の場合は、何かを依頼してお金を支払った時に、依頼したことがなされなかった場合には、返金を求めたり損害賠償を求めることができますが、殺人を依頼して実際に殺人が行われなかったからといって、金を返せと要求したり、損害賠償を請求したりすることはできません。

これは、殺人という依頼そのものが違法だからです。風俗詐欺にも同じようなことがいえる場合があります。例えば、風俗をやめて愛人になる代わりにお金を払うというような愛人契約がその典型的な例です。

不法原因給付の場合、損害賠償や返金を求めることがそもそもできません。もしも風俗嬢との間に金銭の貸し借りや贈与がある場合は、その理由が不法原因給付に当たるかどうかが重要なポイントになります。

交際をチラつかせて金銭を要求してくる詐欺の対処法

問題点でも指摘したとおり、愛人契約などが背景にある場合は、風俗嬢にお金を贈与したり貸与した後で、「お金を返して欲しい」「損害賠償を請求したい」と思っても難しいものがあります。

しかし、高額のお金を騙し取られた場合など、風俗嬢の行為が客の行為と比べてはるかに悪質であったり不正であったりする場合には、被害者である客側の請求が認められることもあります。

実際に、不倫関係にあった女性が既婚者の男性から借りたお金を返すように裁判を起こされた事例では、裁判所が女性に対して借りたお金の一部を返還するように命じた判例があります(大阪地裁H24.4.24判決)。

もしも風俗嬢との間に愛人契約などの公序良俗に反する約束事がある場合には、一度弁護士に相談して専門的な見地からのアドバイスを求めることをおすすめします。

5.スキミング詐欺

スキミング詐欺とは

スキミング詐欺とは、クレジットカードの情報を不正に読み取って勝手に利用するなど、悪用して被害者に損害を与える詐欺のことです。風俗そのものとは関係がありませんが、風俗店でクレジット決済をするときに、スキミング詐欺に遭ってしまうことがあります。

特に、決済するときに店員がクレジットカードを持って店の奥で決済手続きをするような店舗は要注意です。また、風俗嬢がクレジットカードを抜き取ってスキミングするという被害も起きています。

スキミング詐欺の対処法

スキミング詐欺に関しては、クレジットカードに付帯している保険が適用されることが一般的です。そのため、万が一悪用されたとしても、スキミング詐欺の被害にあった可能性があることをクレジットカード会社に申告することで、被害を被らないで済むことがあります。

ただ、暗証番号をわかるようなところに明記していたなど、自分に明らかな過失がある場合には保険の対象外となることもありますので、この点は注意が必要です。

クレジットカードを風俗店で利用すると、10%程度の手数料がかかることも多いため、できればクレジットカードはそもそも持っていかない、デリヘルを呼ぶ時には、財布などわかりやすいところではなく、鍵のかかる場所に厳重に保管しておくなどの予防も必要です。

6.キャッチによるぼったくり詐欺

キャッチとは

歓楽街を歩いていると、風俗店のキャッチが立っていることがあります。風俗店のキャッチは風営法や迷惑行為防止条例などで違法とされていますが、法律に抵触しない際どいラインを保ってキャッチをしている店もあります。

このキャッチは一定の裁量権を持っていることがあり、キャッチを通して店を利用することで、普通に利用するよりも多くサービスを受けられたり、料金を割引してくれることがあります。

キャッチによる詐欺とは

キャッチから割安料金を提案され、それに同意したところ、店に行くよう案内された。その店に行ってみるとさらにお金を要求された、という被害が多発しています。

中には、プレハブのようなところに誘導され、そこでさらにお金を払ったのに女性が来ずにサービスを受けられなかった・そもそも店自体がなかった、などのケースもあります。

悪質なキャッチの多くは、前払いでキャッチにお金を渡すように要求してきます。そして「話が違う」とキャッチに連絡しようとしても、電話番号が繋がらないという顛末です。

キャッチ詐欺の対策法

詐欺にあったことがわかり、キャッチに返金を求めることができればまだいいものの、探してもキャッチがいない、教えてもらった携帯が不通だというケースでは、そもそも返金を求めることすら難しいものです。

こういった悪質なキャッチは「飛ばし携帯」を使っていることもあるため、身元を割り出すことも困難です。他の風俗詐欺トラブルと同様、前払いはしないなどの予防が重要となります。